ユキマサくん純さん、こども家庭庁のサイトに対処規程のひな型(別紙1)が公開されているんだけど、これをそのままダウンロードして使えばいいの?



結論から言うと、そのまま使うのは危険です。
ひな型は「大企業の正規雇用スタッフが中心の事業者」を想定して設計されています。
学習塾の現実、つまり業務委託の非常勤講師が中心という構造には、そのままでは対応できていません。



業務委託の先生がいるとどんな問題が出てくるの?



大きく3つのポイントがあります。
①「不適切な行為」の定義が学習塾の実態に合っていない
②相談窓口の設計が1人経営では成立しない
③「懲戒処分」という表現が業務委託者には法的に使えない、という問題です。
この記事では、ひな型のどの条文をどう書き変えるかを、条項ごとに具体的に解説します。
こども家庭庁から公開されている「児童対象性暴力等対処規程(ひな型)」は、誰でも無料でダウンロードできます。
しかし、学習塾・進学塾・個別指導塾がそのままコピーして提出すると、審査で補正(修正依頼)が入る可能性が高いのです。
この記事では、行政書士の目線でひな型の構造を分解し、学習塾が変更・追記すべき箇所を条項ごとに解説します。
自分で対処規程を作成したい方の実務ガイドとしてお読みください。
なぜ学習塾はひな型をそのまま使えないのか
ひな型(別紙1)の第1条には、次のように書かれています。
この規程は…○○株式会社の○○事業に関し…定めるものである。
この表現からわかるとおり、ひな型は「株式会社」の「事業」単位を前提にしています。また、第3条の実施体制の記載例には「人事部長」「施設長」「人事部課長」など、中規模以上の組織を想定した役職が並んでいます。
一方、多くの学習塾の実態はこうです。
| 項目 | ひな型が想定する組織 | 学習塾の実態 |
|---|---|---|
| 雇用形態 | 正社員・パートタイム中心 | 業務委託の非常勤講師が中心 |
| 組織規模 | 部署・役職が複数ある | 代表者+少数スタッフが多い |
| 対応体制 | 人事部・法務部が対応 | 代表者が1人で対応するケースが多い |
| 場面リスク | 記載なし(汎用) | 個別指導の密室・SNS連絡等の特有リスクあり |
ひな型は「最大公約数の雛形」であり、審査に通る最低限の記載をカバーしているに過ぎません。自社の事業形態に合わせた記述がなければ、書類の実態と規程の内容が乖離しているとして補正を求められます。
ひな型の全体構成を把握する
変更箇所を理解する前に、ひな型がどんな構成になっているかを確認しておきましょう。
| 条項 | 内容 | 学習塾の変更必要度 |
|---|---|---|
| 第1条(目的) | 規程の根拠法令・対象事業の明記 | ★★☆(会社名・事業名の変更は必須) |
| 第2条(定義) | 「児童対象性暴力等」と「不適切な行為」の定義 | ★★★(不適切な行為の定義は学習塾向けにカスタマイズ必要) |
| 第3条(実施体制) | 責任者・対応チームの設定 | ★★★(小規模経営では抜本的な書き換えが必要) |
| 第4条(防止措置) | 犯歴確認結果等に応じた対応 | ★★★(業務委託への対応条項が欠落している) |
| 第5条(調査の実施) | 疑いが生じた場合の調査手順 | ★☆☆(ほぼそのまま使用可) |
| 第6条(被害児童等の保護) | 被害を受けた子どもへの支援措置 | ★☆☆(ほぼそのまま使用可) |
| 第7条(再発防止) | 再発防止策の検討・実施 | ★☆☆(ほぼそのまま使用可) |
変更箇所①|第2条「不適切な行為」の定義を学習塾向けに書き直す
ひな型の記載内容
第2条第2項には「不適切な行為」の定義が置かれており、ひな型には以下の2項目だけが記載されています。
- (1)児童等と私的な連絡先(SNSアカウント等)を交換し、私的なやり取りを行うこと
- (2)休日や放課後に、児童等と二人きりで私的に会うこと
この2項目は、学習塾でも当然禁止すべき行為です。
しかし、これで終わりにしてしまうと学習塾特有のリスク場面が規程から抜け落ちます。
学習塾で追加すべき「不適切な行為」の具体例
横断指針(こども家庭庁・令和7年4月)では、不適切な行為の例として「不必要または過度な接触」「不必要に児童等と密室で二人きりになろうとする」ことが挙げられています。学習塾ではこれを自塾の業態に合わせた具体的な表現に落とし込む必要があります。
| 場面 | 学習塾特有の不適切な行為の例 |
|---|---|
| 個別指導中 | 施錠した個室で1対1の指導を行うこと(施設のルールで禁止されていない場合でも) |
| SNS・連絡ツール | 学習アプリ・ゲームのアカウントで生徒と私的なやり取りを行うこと |
| 送迎 | 保護者の同意なく生徒を自家用車に乗せること |
| 補講・自習 | 閉校後に生徒と2人きりになる状況を作ること |
| 体の接触 | 指導に不必要な身体接触(肩・手・頭部への接触等)を行うこと |
「不適切な行為」の定義が曖昧だと、実際に問題が起きたときに「ルール違反に当たるかどうか」の判断ができなくなります。具体的な場面を列挙することで、抑止効果も高まります。
ただし、列挙が過度になると講師が過度に萎縮する原因にもなるため、「等」で括って例示として記載する手法が実務では有効です。
変更箇所②|第3条「実施体制」で相談窓口を正しく設計する
ひな型の記載内容
第3条では、責任者と「対応チーム」として次のような役割分担を設定するよう求めています。
| 役割 | ひな型の例示 |
|---|---|
| チーム長 | 人事部長 |
| 被害児童・保護者担当 | 施設長 |
| 加害が疑われる者担当 | 人事部〇〇課長 |
| 対外調整担当 | 人事部●●課長 |
これをそのままコピーして「チーム長:代表者」「被害児童担当:代表者」「加害担当:代表者」とすべての役割に同一人物を書くことは、体制として機能しないと判断される可能性があります。
学習塾が陥りやすい「代表者=相談窓口」問題
小規模な学習塾で最も多い失敗パターンがこれです。
相談窓口:代表者(〇〇 〇〇)
責任者:代表者(〇〇 〇〇)
問題は、代表者が加害者になったとき、この規程が機能しなくなるという点です。加害者本人が相談窓口では、相談を受け付けることができません。
解決策:外部相談窓口の設置を規程に明記する
スタッフが少ない学習塾では、内部だけで役割分担を完結させることが難しいため、外部機関との連携を規程に組み込むことが有効です。
- 外部弁護士・社労士への顧問契約を結び「外部相談窓口」として明記する
- こども家庭庁・都道府県こども家庭センターへの通報フローを明記する
- 代表者が対応者となる場合でも「外部機関への速やかな相談義務」を追記する
規程の文言例としては、たとえば次のように記載できます。
責任者が加害行為を行った疑いがある場合、または責任者が対応することが適切でないと認められる場合には、外部相談窓口(○○弁護士事務所 TEL:〇〇)に速やかに相談するとともに、所管行政庁に報告する。
変更箇所③|第4条「防止措置」で業務委託講師への対応を追記する【最重要】
これが学習塾向けカスタマイズの中で最も重要なポイントであり、独学での作成が最も難しい箇所です。
ひな型に潜む「業務委託問題」
ひな型の第4条第1項(1)には次のように書かれています。
(犯歴確認の結果、特定性犯罪事実該当者と判明した場合)原則として、当該従事者を対象業務に従事させないこと。
「従事させない」という表現自体は問題ありません。
問題は、この「従事させない」を実現するための手段が、雇用形態によって異なるという点です。
| 従事者の雇用形態 | 「従事させない」手段 | 就業規則・規程での根拠 |
|---|---|---|
| 正社員・パート(直接雇用) | 配置転換・休職命令・懲戒処分 | 就業規則に根拠が必要(別紙5参照) |
| 業務委託講師(個人業務受託者) | 委託業務からの外し・契約解除 | 業務委託契約書に条項が必要 |
ひな型の第4条は、この使い分けを明示していません。業務委託講師が主力の学習塾では、「懲戒処分」という表現を使うことが法的に不正確になります。業務委託契約者に対して使用者が「懲戒」することはできないからです。
ガイドラインが示す業務委託への正しい対応
こども性暴力防止法の中間とりまとめ(こども家庭庁)では、業務委託(個人業務受託者)への対応として、次の内容をガイドラインで示すとしています。
- 業務委託に係る契約に「犯罪事実確認・研修受講に応じなければならない」旨を定める
- 上記義務違反を契約解除事由として明記する
- 発注者である対象事業者が、個人業務受託者に直接、説明・確認・研修受講依頼を行う
つまり、学習塾が業務委託講師に対してとるべき対応の流れは次のようになります。
【業務委託講師への対応フロー】
| タイミング | 塾が行うべき対応 | 必要な書類 |
|---|---|---|
| 契約締結時 | 業務委託契約書に犯歴確認・研修受講の義務と契約解除事由を追記 | 業務委託契約書(改訂版) |
| 採用・更新時 | 同意書の取得(犯歴確認に応じる旨) | 同意書(別紙2参照) |
| 犯歴確認後 | 結果に問題がある場合、業務委託契約の解除を検討 | 対処規程に「契約解除」の根拠を明記 |
| 問題行為発生時 | 業務委託を「従事させない」措置として、業務外しまたは契約解除 | 対処規程の第4条に明記 |
対処規程への追記方法
第4条の後に、次のような条項を追記することが実務上有効です。
(業務委託講師への対応)
第〇条 前条(防止措置)の規定を業務委託契約により従事する者(以下「業務委託講師」という。)に対して適用する場合、「従事させない」とは業務委託の内容から対象業務を除外すること、または業務委託契約の全部もしくは一部を解除することを含むものとする。
2 業務委託講師との契約には、犯罪事実確認・研修受講に応じる義務及びこれに違反した場合の契約解除事由を明記するものとする。
【重要】
業務委託契約書にDBSの条項を追記する作業も、対処規程の作成と並行して行う必要があります。規程だけ整備して業務委託契約書に根拠がなければ、規程が実行不能になります。
【審査で差し戻しになりそうなパターン】学習塾に多い3つのミス
こども家庭庁の認定審査で補正(修正依頼)が入りそうなパターンを3つ紹介します。
差し戻しパターン①|業務委託講師が対象外として扱われている
第3条の対応者リストに「正社員講師・教室長」しか書かれておらず、業務委託の非常勤講師が対象に含まれていない場合、審査官から「業務委託従事者への対応が規程に明記されていません」と指摘が入ります。
こども性暴力防止法では、雇用形態・報酬の有無を問わず、対象業務に継続的に従事する者は対象業務従事者に該当します。業務委託の講師も例外ではありません。
差し戻しパターン②|相談窓口が「代表者のみ」になっている
第3条の相談窓口に「代表者(〇〇 〇〇) TEL:〇〇」とだけ記載してある場合、「代表者が加害者になった場合の対応フローがありません」と指摘されるケースがあります。
規程には、代表者が対応できない場合の代替手段(外部機関への通報先・弁護士等の外部窓口)を必ず記載してください。
差し戻しパターン③|就業規則に「配置転換・懲戒」の根拠がない
ガイドラインは、防止措置として雇用する従事者への配置転換・懲戒を行う場合、あらかじめ就業規則等に根拠規定を設けることを求めています。
対処規程に「配置転換する」と書いていても、就業規則にその根拠がなければ実施できません。就業規則の整備(別紙5参照)と対処規程の整備は必ずセットで行ってください。
学習塾向け対処規程チェックリスト
作成した対処規程が、学習塾として適切な内容になっているか確認しましょう。
- 第1条:法人名・事業名が正確に記載されているか
- 第2条:学習塾特有の「不適切な行為」(個別指導中の密室、SNS連絡等)が追記されているか
- 第3条:「責任者が加害者になった場合」の対応ルートが明記されているか
- 第3条:外部相談窓口(弁護士・行政機関等)の連絡先が記載されているか
- 第4条:業務委託講師への対応が「契約解除」として明記されているか
- 業務委託契約書:犯罪事実確認・研修受講義務と契約解除事由が追記されているか
- 就業規則:配置転換・懲戒の根拠規定が整備されているか(別紙5参照)
- 全体:事業の実態(教室数・スタッフ数・雇用形態)と規程の内容が一致しているか
まとめ



ひな型が公開されていても、学習塾はそのまま使えないポイントが3か所もあるんだね。特に業務委託の問題は、気づかずに提出してしまいそう。



そうなんです。
業務委託講師が多い学習塾では、ひな型の設計と合っていないんですよね。
審査官もプロですから、業務委託の扱いが規程に反映されていない場合は指摘が入るおそれがあります。
特に第4条の書き換えと、業務委託契約書への追記はセットで対応してください。
こども家庭庁のひな型(別紙1)は無料でダウンロードできますが、学習塾がそのまま使うには3つの重要な変更・追記が必要です。
この記事の重要ポイント
- 第2条「不適切な行為」の定義は、個別指導・SNS・送迎など学習塾特有の場面を追記する
- 第3条「相談窓口」は代表者のみにせず、外部機関の連絡先を必ず記載する
- 第4条「防止措置」は業務委託講師への「契約解除」対応を追記する(「懲戒」は使えない)
- 対処規程の整備と同時に、業務委託契約書・就業規則もセットで見直す
- これらを整備していないと、認定審査で補正(修正依頼)が入り、認定が1〜2か月遅れる



自分でやるには結構ボリュームがあるね。
業務委託契約書まで変えないといけないのは想定してなかったよ。



そうですね。
「対処規程を1本作るだけ」と思っていたら、業務委託契約書・就業規則・誓約書と連動して整備しなければならない書類が複数出てきます。
まず全体像を把握した上で進めることが、遠回りなようで一番近道ですよ。
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