ユキマサくん2026年中に施行予定の日本版DBS(こども性暴力防止法)について、教育・保育事業者が犯罪事実確認を怠ったらどうなるの?
実際にどんな処分があるのかな?



確かに重要な問題ですね。
事業者の種別によって異なる処分内容があります。
認定取消しや公表措置など、事業継続に直結する深刻なリスクもありますので、詳しく解説していきましょう。
2026年中の施行が迫る「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」こども性暴力防止法により、教育・保育関係の事業者には新たな義務が課せられることになります。
特に重要なのが「犯罪事実確認」の義務です。
これは、教員や保育士などの職員を採用する際に、性犯罪歴の有無を確認することを事業者に義務付ける制度で、いわゆる「日本版DBS」と呼ばれています。
この義務を怠った場合、事業者は深刻な法的責任を負うことになります。
学校設置者等には是正命令や公表措置、認定を受けた民間事業者には認定取消しなど、事業運営に重大な影響を与える行政処分が待っています。
本記事では、犯罪事実確認を怠った場合に事業者が直面する具体的な法的責任と行政処分のリスクについて、事業者の種別ごとに詳しく解説していきます。
特に認定取消しなどの重大な処分については、実務的な対策も含めてお伝えします。
- 学校設置者等と民間事業者の処分内容の違い
それぞれに課される行政処分の具体的な内容を解説 - 認定取消しの条件と影響
民間事業者にとって最も深刻な処分について詳しく説明 - 公表措置による社会的制裁
違反事業者の氏名等が公表される仕組みとその影響 - 帳簿不備等に対する罰則
50万円以下の罰金刑となる具体的なケース - 法的責任を回避するための対策
確実な体制構築のためのポイント
犯罪事実確認義務の基本的な枠組み
こども性暴力防止法では、事業者を大きく2つのカテゴリーに分けて、それぞれ異なる義務を課しています。
この分類によって、義務違反時の処分内容も大きく変わってくるため、まずは基本的な枠組みを理解することが重要です。
学校設置者等の犯罪事実確認義務
学校設置者等には、学校教育法に規定される学校(大学を除く)、専修学校(高等課程)、幼保連携型認定こども園、認定こども園法に基づく認定施設、児童相談所、児童福祉施設、指定障害児通所支援事業などが含まれます。
- 新規採用時:教員等として業務に従事させる前まで
- 施行時現職者:施行日から3年以内で政令で定める期間まで
- 継続雇用時:直近の確認日から5年を超えて業務に従事させる場合
民間教育保育等事業者の犯罪事実確認義務
民間教育保育等事業者は、専修学校(一般課程)、各種学校、民間教育事業、認可外保育事業、放課後等デイサービス事業、一時預かり事業、病児保育事業などを行う事業者です。
これらの事業者は、内閣総理大臣の認定を受けることで、学校設置者等と同等の措置を実施する体制を確保していると認められ、犯罪事実確認の義務を負います。
- 新規採用時:教育保育等従事者として業務に従事させる前まで
- 認定時現職者:認定日から1年以内で政令で定める期間まで
- 継続雇用時:直近の確認日から5年を超えて業務に従事させる場合
やむを得ない事情による特例措置
教員等に急な欠員が生じた場合など、やむを得ない事情により業務に従事させるまでに犯罪事実確認を行う時間がない場合は、6か月以内で政令で定める期間内に確認を行うことができます。
ただし、この期間中は当該職員を特定性犯罪事実該当者とみなして必要な措置を講じなければなりません。つまり、子どもと直接接触しない業務への配置転換などが必要になります。
継続的な管理義務
犯罪事実確認は一度行えば終わりではありません。事業者には以下の継続的な義務が課されます。
- 帳簿の備付け・記載・保存:犯罪事実確認の実施状況を記録
- 定期報告:実施状況を内閣総理大臣に定期的に報告
- 情報管理:管理責任者の設置など適正な管理体制の構築
- 5年ごとの再確認:継続雇用する職員の定期的な確認



学校設置者等と民間事業者で義務の内容が違うんだね。



そうなんです。
特に民間事業者は認定を受けてから義務が発生するので、認定を受けなければ義務はありませんが、認定を受けた場合の違反リスクはより深刻になります。
学校設置者等における法的責任と行政処分
学校設置者等が犯罪事実確認義務を怠った場合、段階的な行政処分が課されます。
これらの処分は事業者の社会的信用に大きな影響を与えるため、確実な体制構築が不可欠です。
是正命令による行政指導
内閣総理大臣は、学校設置者等がこの法律の規定に違反していると認める場合、当該違反を是正するために必要な措置をとるよう命じることができます。
- 犯罪事実確認の未実施または不適切な実施
- 情報管理体制の不備(管理責任者の未設置など)
- 犯罪事実確認記録の不適切な取り扱い
- 第三者への情報提供や目的外利用
公表措置による社会的制裁
是正命令に従わない場合や重大な違反がある場合、国は違反事業者の情報をインターネット等により公表することができます。
公表される情報
・氏名または名称、住所
・違反のあった事業所の名称や所在地
・違反条項、違反内容
・違反に係る対象業務従事者の数
この公表措置は事業者の社会的信用を著しく損なう可能性があります。
保護者や地域住民からの信頼失墜、入学者・入園者数の減少など、事業運営に深刻な影響を与えることが予想されます。
なお、違反が是正された場合は公表が取り下げられますが、一度失った信用を回復するには長期間を要する場合が多いでしょう。
帳簿不備等に対する罰則
直接の確認義務違反とは別に、義務の履行状況を管理・報告する体制の不備に対しては50万円以下の罰金が科されます。
- 帳簿を備え付けない、記載しない、虚偽の記載をする
- 帳簿を保存しない(法定保存期間中の廃棄等)
- 定期報告をしない、虚偽の報告をする
- 検査を拒否する、妨害する、忌避する
この罰則は、国、地方公共団体、独立行政法人、国立大学法人、地方独立行政法人を除く私立学校等に適用されます。公立学校の設置者である地方公共団体には適用されません。
処分の段階的適用
学校設置者等に対する処分は、通常以下のような段階を経て行われると考えられます。
- 行政指導:まずは任意の改善指導
- 是正命令:法的拘束力のある改善命令
- 公表措置:違反事業者名等の公表
- 罰則適用:帳簿不備等があれば罰金刑



純さん、学校設置者等の場合は事業停止のような処分はないの?



そうですね、ユキマサくん。
学校設置者等は公的な性格が強いため、是正命令と公表措置が中心になります。
一方、民間事業者の場合はもっと厳しい処分があるんです。
民間教育保育等事業者(認定事業者等)における法的責任と行政処分
認定を受けた民間教育保育等事業者に対する行政処分は、学校設置者等よりもさらに厳しい内容となっています。
特に認定取消しは事業継続に直結する重大な処分です。
認定取消し(義務的取消し)
認定事業者等が犯罪事実確認を行っていない場合、内閣総理大臣は認定等を取り消すものとすると法律で明記されており、これは裁量の余地がない義務的な取消しです。
義務的取消しとなる場合
・新規採用時の犯罪事実確認の未実施
・認定時現職者の確認期限内未実施
・5年ごとの再確認の未実施
認定が取り消されると、事業者は犯罪事実確認を行うことができなくなり、実質的に子どもに接する事業の継続が困難になります。
その他の認定取消し事由
犯罪事実確認の未実施以外にも、以下の場合に認定が取り消されます。
- 偽りその他不正な手段で認定を受けた場合
- 認定基準に適合しなくなった場合
- 適合命令・是正命令に違反した場合
適合命令・是正命令
認定取消しに至る前の段階として、内閣総理大臣は以下の命令を発することができます。
認定事業者等が認定基準(犯罪事実確認の体制を含む)に適合しなくなったと認める場合、期限を定めて適合に必要な措置をとるよう命じます。
情報漏えいなど、情報管理が不適切であると認められる事態が生じた場合、違反を是正するための措置を命じます。
公表措置による社会的制裁
認定事業者等についても、学校設置者等と同様に公表措置が適用されます。
- 認定時の公表:認定または共同認定が行われた場合の事業概要等
- 認定取消し時の公表:認定が取り消された旨をインターネット等で公表
- 義務違反時の公表:犯罪事実確認義務違反の詳細な情報
特に認定取消しの公表は、「安全な事業者」として認定を受けていたにも関わらず、それが取り消されたという事実が広く知られることになり、事業者の信用失墜は学校設置者等以上に深刻になる可能性があります。
罰則(帳簿不備等)
学校設置者等と同様に、帳簿の備付け・記載・保存の不備、または定期報告の不備があった場合、50万円以下の罰金に処せられます。
認定取消しが事業に与える深刻な影響
認定取消しは民間事業者にとって極めて深刻な処分です。
- 事業継続の困難:犯罪事実確認ができなくなり、新規職員採用が実質不可能
- 競争力の失失:認定を受けた他事業者との差別化ができない
- 信用失墜:取消し事実の公表による社会的信用の著しい低下
- 経営への影響:利用者離れによる収益悪化



民間事業者の認定取消しって本当に厳しいんだね。



そうなんです。
認定は任意で受けるものですが、一度認定を受けたら確実に義務を履行しなければなりません。
法的責任を回避するための対策
犯罪事実確認義務を確実に履行し、法的責任を回避するためには、事前の準備と継続的な管理体制の構築が不可欠です。
以下の対策を参考に、確実な体制を整備しましょう。
確実な犯罪事実確認体制の構築
- 採用決定前の確認手続き組み込み:内定通知前に犯罪事実確認を完了する
- 確認期限の管理:施行時現職者や5年ごとの再確認期限をカレンダーで管理する
- やむを得ない事情への対応:急な欠員時の特例措置フローを事前に策定する
- 犯罪事実確認責任者の指定:手続き全体を統括する責任者を配置する
- 情報管理責任者の設置:法律で義務付けられた管理責任者を明確に指定する
- バックアップ体制:責任者不在時の代替手続きを整備する
帳簿管理の徹底
50万円以下の罰金を避けるため、帳簿の適切な管理は重要です。
帳簿管理のチェックポイント
・犯罪事実確認の実施状況を正確に記載
・法定保存期間中の確実な保管
・定期報告書の期限内提出
・検査への適切な対応体制
- 記載事項の標準化:記載すべき項目をチェックリスト化する
- 定期的な記載内容の確認:月次または四半期ごとの点検する
- 電子化の検討:紛失リスクを減らすためのデジタル管理する
情報管理体制の整備
犯罪事実確認記録は極めて機微な個人情報のため、厳格な管理体制が必要です。
- 施錠可能な保管庫の設置:権限者のみがアクセス可能な環境を構築する
- アクセス記録の管理:誰がいつ情報にアクセスしたか記録する
- 廃棄手続きの明確化:不要になった記録を確実に廃棄する
- 職員への教育研修:取り扱いルールを周知徹底する
- 第三者提供の禁止徹底:目的外利用・提供を防止する
- 漏えい時の対応手順:速やかな報告体制を確立する
継続的な制度運用
犯罪事実確認は一度で終わりではなく、継続的な運用が求められます。
- 年間スケジュールの作成:確認時期、報告時期を明確化する
- 職員の異動管理:新規採用、配置転換時の確認漏れを防止する
- 制度変更への対応:法改正やガイドライン変更の情報収集を怠らない
- 内部監査の実施:定期的に制度運用状況を点検する
専門家との連携
複雑な制度を確実に運用するため、専門家のサポートを活用することも重要です。
- 行政書士による手続き支援:申請代行や規程整備のサポート
- 社会保険労務士との連携:労務管理との整合性確保
- 弁護士への相談:法的リスクや対応方針の確認
まとめ
こども性暴力防止法による犯罪事実確認義務は、子どもたちを性暴力から守るための重要な制度ですが、同時に事業者にとって重大な法的責任を伴うものです。
事業者別の主なリスク
- 是正命令による行政指導
- 違反内容の公表による社会的信用の失墜
- 帳簿不備等による50万円以下の罰金
- 犯罪事実確認未実施による義務的な認定取消し
- 認定取消しによる事業継続の困難
- 取消し事実の公表による競争力の喪失
- 帳簿不備等による50万円以下の罰金
特に民間事業者の認定取消しは事業の根幹に関わる処分であり、一度取り消されると事業継続が極めて困難になります。認定を受ける際は、確実に義務を履行できる体制を整備してから申請することが重要です。
リスク回避のために今すぐ取り組むべきこと
- 責任者の指定:犯罪事実確認と情報管理の責任者を明確に配置
- 手続きフローの整備:採用時から継続管理まで一貫した手続きを構築
- 情報管理体制の確立:機微情報を適切に管理する物理的・技術的対策
- 帳簿管理の準備:記載項目や保存方法を事前に決定
- 職員研修の実施:制度の重要性と取り扱いルールの周知
継続的な制度見直しの必要性
政府は法律の施行後3年を目途に、児童対象性暴力等の防止に関する制度のあり方について検討を加え、必要に応じて必要な措置を講じることとしています。
制度の運用状況や社会情勢の変化に応じて、対象事業者の範囲や確認対象となる犯罪の種類などが見直される可能性があるため、事業者は継続的に最新情報を収集し、体制を見直していく必要があります。
行政書士によるサポートの重要性
犯罪事実確認制度は、法的な専門知識と継続的な管理体制の両方が求められる複雑な制度です。
特に以下の点で行政書士のサポートは有効です。
- 申請手続きの代行:複雑な申請書類の作成と提出
- 社内規程の整備:法律に適合した管理規程の作成
- 継続的なコンプライアンス支援:制度変更への対応と定期的な見直し
子どもたちの安全を守り、同時に事業者の法的責任を回避するため、専門家と連携しながら確実な体制構築を進めていきましょう。
日本版DBSの運用は当サポートセンターにお任せください
当サポートセンターは、事業者様の日本版DBSの制度設計~運用までをまとめてサポートしております。
- 施設として日本版DBSの認定申請を受けたい
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このような事でお悩みの理事長、事務長、施設長、社長、園長はお気軽にお問い合わせください。
本制度の本格スタートである2026年末までにはまだまだ時間がありますが、今からでもできることはたくさんあります。
制度が始まってから慌てないためにも、今のうちからしっかりと体制を整えていきましょう。
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