日本版DBS「特定性犯罪」とは?犯罪履歴確認の対象となる行為を完全解説

ユキマサくん

日本版DBS(こども性暴力防止法)で犯罪履歴確認をおこなうと聞いたんだけど、具体的にどのような犯罪が対象になるの?
「特定性犯罪」が対象らしいけど、特定性犯罪ってどんな犯罪なの?

純さん

確かに「特定性犯罪」という法律用語は分かりにくいですよね。
日本版DBS(こども性暴力防止法)の犯罪履歴確認は、児童福祉法や都道府県条例まで幅広い範囲が対象となっています。
今回は、どのような行為が犯罪履歴確認の対象になるのかを詳しく解説しますね。

2026年中に施行される日本版DBS(こども性暴力防止法)では、子どもと接する職員について「特定性犯罪」の履歴確認が義務付けられます。

しかし、「どのような犯罪が特定性犯罪に該当するのか?」については、法律や条例にまたがる複雑な内容となっているので分かりにくいかと思います。

そこで今回は、どのような犯罪が「特定性犯罪」に該当するのかを分かりやすく解説します。

本記事は、こども性暴力防止法第2条第7項に規定する「特定性犯罪」及び関連資料を基に作成しております。
実際の法運用については、施行時の政令や通達等により詳細が定められる予定ですので、最新情報をご確認ください。

目次

1. まず結論から知りたい方へ【重要ポイント】

📋 特定性犯罪の重要ポイント

  • 法律と条例の両方が対象
    刑法、児童福祉法等の国の法律に加え、都道府県の迷惑防止条例や青少年条例も含まれます。
  • 被害者は子どもに限定されない
    大人への性犯罪であっても、特定性犯罪に該当すれば確認対象となります。
  • 確認期間は刑の種類により異なる
    実刑20年、執行猶予・罰金は10年と、一般的な刑の消滅より長期間設定されています。
  • 不起訴事案は対象外
    逮捕されても不起訴となった場合は「前科」に該当せず、確認対象外です。

🚫 対象外となる主な犯罪

  • 下着の窃盗罪
  • ストーカー規制法違反
  • その他の性暴力以外の犯罪

特定性犯罪は「性暴力から子どもを守る」という法の趣旨に基づいて選定されており、直接的な性的行為だけでなく、撮影行為や言動による被害も幅広く含まれています。

2. 特定性犯罪とは何か

2-1. 特定性犯罪の定義

「特定性犯罪」とは、こども性暴力防止法第2条第7項で定められた「犯罪事実確認の対象となる性犯罪」のことです。

この制度は、イギリスのDBS(Disclosure and Barring Service)制度を参考にしており、子どもの安全を確保するために、性犯罪の前科がある人が子どもと接する職業に就くことを防ぐ仕組みです。

2-2. 法律と条例による二層構造

特定性犯罪は大きく2つのカテゴリーに分かれています。

分類根拠法令主な内容
国の法律による犯罪刑法、児童福祉法等重大な性犯罪
全国共通の基準
都道府県条例による犯罪迷惑防止条例
青少年健全育成条例
痴漢、盗撮等
地域ごとの条例

2-3. なぜ長期間の確認が必要なのか

特定性犯罪の確認期間は、一般的な刑の消滅期間よりも長く設定されています。

確認期間の設定理由

  • 子どもへの深刻な影響
    性暴力は子どもの心身に生涯にわたる重大な影響を与えるため
  • 再犯率の高さ
    性犯罪は他の犯罪類型と比較して再犯率が高い傾向にあるため
  • 特殊な環境
    教育・保育現場は「支配性」「継続性」「閉鎖性」という特徴があるため

これらの理由から、子どもを守るために通常より長期間の確認が必要とされています。

3. 法律で定められた特定性犯罪(詳細解説)

3-1. 刑法による犯罪

刑法で定められた性犯罪のうち、以下の条文に該当する犯罪が特定性犯罪とされています。

刑法第176条・177条:不同意わいせつ・不同意性交等

  • 不同意わいせつ罪(176条)
    同意のないわいせつな行為全般
  • 不同意性交等罪(177条)
    同意のない性交、肛門性交、口腔性交

刑法第179条:監護者わいせつ及び監護者性交等

  • 18歳未満の者に対し、その監護者である地位を利用したわいせつ行為
  • 親、養父母、後見人など監護関係にある者による犯罪

刑法第181条:不同意わいせつ等致死傷

  • 上記の犯罪により被害者を死傷させた場合

刑法第182条:16歳未満の者に対する面会要求等

  • 16歳未満の者に対する面会要求、誘引等
  • いわゆる「グルーミング」行為を処罰

刑法第241条:強盗・不同意性交等及び同致死

  • 強盗と性犯罪を組み合わせた重大犯罪

3-2. 児童福祉法による犯罪

児童福祉法第60条第1項:淫行をさせる罪

  • 児童に淫行をさせる行為
  • 児童を売春や性的行為に従事させることを処罰

3-3. 児童買春・児童ポルノ関連法による犯罪

主な対象犯罪(第4条~第8条)

  • 児童買春(4条)
    18歳未満の者との対償を伴う性交等
  • 児童買春周旋(5条)
    児童買春の仲介行為
  • 児童買春勧誘(6条)
    児童買春の勧誘行為
  • 児童ポルノ所持・提供等(7条)
    児童ポルノの製造、提供、所持等
  • 児童買春等目的人身売買等(8条)
    児童買春等を目的とした人身売買

3-4. 性的姿態撮影処罰法による犯罪

令和5年に制定された比較的新しい法律で、撮影による性的プライバシーの侵害を処罰します。

主な対象犯罪(第2条~第6条)

  • 性的姿態等撮影(2条)
    同意のない性的な姿態の撮影
  • 性的影像記録提供等(3条)
    撮影した性的影像の提供・公表等
  • 性的影像記録保管(4条)
    性的影像記録の保管
  • 性的姿態等影像送信(5条)
    ライブ配信等による性的影像の送信
  • 性的姿態等影像記録(6条)
    送信された性的影像の記録

3-5. 盗犯等の防止及処分に関する法律

第4条:常習特殊強盗致傷

  • 限定的な適用
    刑法第241条第1項の罪(強盗・不同意性交等)を犯す行為に係るもののみ対象
  • 常習性のある重大犯罪
    強盗と性犯罪を組み合わせた行為を常習的におこなう者への特別処罰
  • 昭和5年制定の古い法律
    現在でも適用される特別法として特定性犯罪に含まれている

4. 都道府県条例で定められた特定性犯罪

都道府県の条例で定める罪のうち、以下の4つの行為を罰するものが特定性犯罪とされます。これらは政令で具体的に定められる予定です。

4-1. 迷惑防止条例関連

各都道府県の迷惑防止条例で規定される以下の行為が対象となります。

①みだりに人の身体の一部に接触する行為

  • いわゆる「痴漢」行為
    電車内、駅構内、商業施設等での身体接触
  • 具体例
    衣服の上から、または直接に性的な部位に触れる行為
  • 場所を問わない
    公共の場所だけでなく、個人間の関係でも適用される可能性

②盗撮・のぞき見行為

  • 対象となる行為
    ・正当な理由なく下着や身体をのぞき見する行為
    ・写真機等を用いて下着や身体を撮影する行為
    ・撮影目的で写真機等を差し向ける・設置する行為
  • 具体例
    ・更衣室、トイレ、風呂場等での盗撮
    ・スカート内の撮影
    ・隠しカメラの設置
  • 撮影の成否を問わない
    実際に撮影できなくても、撮影目的で機器を向けただけで処罰対象

③みだりに卑わいな言動をする行為

  • 対象となる行為
    性的な内容の発言、つきまとい等(①②を除く)
  • 具体例
    ・性的な内容の声かけ
    ・わいせつな言葉の連呼
    ・性的な内容のメッセージ送付
  • 継続性・反復性
    多くの条例では継続的または反復的な行為を要件としている

4-2. 青少年健全育成条例関連

④児童と性交し、又は児童に対しわいせつな行為をする行為

  • いわゆる「淫行」処罰規定
    各都道府県の青少年健全育成条例で規定
  • 対象年齢
    18歳未満の青少年(都道府県により若干の差異あり)
  • 具体例
    ・成人と未成年者との性的関係
    ・青少年に対するわいせつ行為
    ・年齢を偽った場合でも適用される可能性
  • 例外規定
    真摯な交際関係にある場合等は例外とされることが多い

都道府県条例については、施行日が近づいた段階で、こども家庭庁及び警察庁が各都道府県に調査をおこない、政令で具体的に定められる予定です。
また、条例の改廃については定期的に報告が求められることになっています。

5. 確認期間と実務上の注意点

画像引用:https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/106604.html

5-1. 刑の種類による確認期間の違い

特定性犯罪の確認期間は、刑の種類によって異なります。これは一般的な刑の消滅期間よりも長く設定されています。

刑の種類確認期間起算点
実刑判決
(拘禁刑)
20年間刑の執行終了から
執行猶予判決10年間裁判確定日から
罰金刑10年間刑の執行終了から

5-2. 一般的な刑の消滅との違い

通常の刑の消滅期間と比較すると、特定性犯罪の確認期間は大幅に長く設定されています

一般的な刑の消滅期間

  • 罰金刑
    罰金支払いから5年経過で刑が消滅
  • 執行猶予
    執行猶予期間経過後、10年で刑が消滅
  • 実刑
    執行終了から10年で刑が消滅

特定性犯罪の確認期間との比較

刑の種類一般的な刑の消滅特定性犯罪の確認期間
罰金刑5年10年+5年
執行猶予10年10年同じ
実刑10年20年+10年

5-3. 不起訴事案の扱い

犯罪履歴確認において重要なポイントは、「前科」に該当するかどうかです。

前科とは

  • 有罪判決が確定した場合
    裁判で有罪判決を受け、判決が確定したもの
  • 略式命令による罰金刑
    略式手続きにより罰金刑が確定したもの

🚫 前科に該当しないケース

  • 不起訴処分
    検察官が起訴しなかった場合(嫌疑不十分、起訴猶予等)
  • 無罪判決
    裁判で無罪が確定した場合
  • 逮捕のみ
    逮捕されたが起訴されなかった場合

つまり、特定性犯罪で逮捕されても、不起訴になった場合は犯罪履歴確認の対象外となります

5-4. 事業者が知っておくべき実務ポイント

確認のタイミング

  • 新規採用時
    採用前に必ず実施(内定後、勤務開始前)
  • 現職員
    施行日から3年以内に実施
  • 定期確認
    初回確認から5年ごとに再確認

対象となる職員

  • 雇用形態を問わない
    正職員、パート、アルバイト、派遣、業務委託、ボランティア等
  • 子どもと接する業務
    直接的に子どもと関わる業務に従事する者

情報管理の重要性

  • 要配慮個人情報
    犯罪履歴は個人情報保護法上の要配慮個人情報に該当する
  • 厳格な管理義務
    適切な管理体制の整備が法的に義務付けられている
  • 漏洩時の罰則
    情報を漏洩した場合は刑事罰の対象となる

証明書の管理と廃棄

  • 保存期間
    確認日から5年経過した年度末から30日以内に廃棄
  • 離職時の廃棄
    職員が離職した場合は離職日から30日以内に廃棄
  • 適切な廃棄方法
    復元不可能な方法で確実に廃棄する

5-5. 制度運用上の留意点

本人への事前通知

  • 性犯罪歴がある場合、事業者への証明書交付前に本人に通知
  • 本人は通知内容の訂正請求が可能(2週間以内
  • 本人は内定辞退や退職が可能(一定期間内

事業者の対応義務

  • 配置転換等の検討
    性犯罪歴がある場合は、子どもへの性暴力防止のための必要な措置を検討
  • 個別判断
    犯罪の内容、経過年数、本人の状況等を総合的に判断
  • 記録の作成・保管
    確認の実施状況を記載した帳簿の作成・管理が義務

特定性犯罪の確認期間は、子どもの安全を長期間にわたって確保するために設定されています。
事業者は、この制度の趣旨を理解し、適切な情報管理と運用をおこなうことが重要です。

6. まとめ:特定性犯罪の理解と適切な制度運用に向けて

日本版DBS(こども性暴力防止法)における「特定性犯罪」は、子どもを性暴力から守るという法の趣旨に基づいて幅広く定義されていることがお分かりいただけたでしょうか。

🔍 特定性犯罪の全体像

国の法律による犯罪

  • 刑法:不同意わいせつ・性交等、監護者犯罪、16歳未満への面会要求等
  • 児童福祉法:淫行をさせる罪
  • 児童買春・児童ポルノ関連法:児童買春、児童ポルノ所持・提供等
  • 性的姿態撮影処罰法:同意のない性的撮影、画像拡散等
  • 盗犯等防止処分法:常習特殊強盗致傷(限定的適用)

都道府県条例による犯罪

  • 迷惑防止条例:痴漢、盗撮・のぞき見、卑わいな言動
  • 青少年健全育成条例:児童との性交・わいせつ行為

📋 制度理解のポイント

  • 包括的な対象範囲
    直接的な性的行為だけでなく、撮影行為や言動による被害も含む
  • 被害者の年齢を問わない
    大人への性犯罪であっても確認対象となる
  • 不起訴事案は対象外
    「前科」に該当するもののみが確認対象
  • 長期間の確認期間
    子どもの安全確保のため通常より長い期間設定

🔒 情報管理の重要性

  • 要配慮個人情報としての厳格管理
    適切な管理体制の整備が法的義務
  • 確実な廃棄の実施
    保存期間終了後の適切な廃棄処理
  • 違反時の重い責任
    情報漏洩や廃棄義務違反には刑事罰

日本版DBSの施行まで残り時間が限られています。事業者の皆様には、以下の準備が求められます。

🚀 今すぐ始めるべき準備

  • 制度の正確な理解
    特定性犯罪の範囲と自施設への適用を確認する
  • 社内規程の整備
    情報管理規程や服務規律を策定・見直す
  • 管理体制の構築
    責任者を明確にし、適切な管理環境を整備する
  • 職員への周知
    制度の趣旨と運用方法を説明し、必要に応じて研修を実施する

日本版DBSは、単なる制度の導入ではなく、社会全体で子どもたちを性暴力から守るという強い意志の表れです。

教育・保育に携わる事業者の皆様が、この制度を適切に理解し運用できるようになれば、子どもたちが安心して学び、育つ環境が整います。

日本版DBSの導入は複雑で専門的な内容を含みますが、子どもの安全という崇高な目的のために、私たち一人ひとりができることから始めましょう。

日本版DBSの運用は当サポートセンターにお任せください

当サポートセンターは、事業者様の日本版DBSの制度設計~運用までをまとめてサポートしております。

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このような事でお悩みの理事長、事務長、施設長、社長、園長はお気軽にお問い合わせください。

本制度の本格スタートである2026年末までにはまだまだ時間がありますが、今からでもできることはたくさんあります。

制度が始まってから慌てないためにも、今のうちからしっかりと体制を整えていきましょう。

貴施設の現状をしっかりとヒアリングした上で、最適な日本版DBSの制度導入~運用をサポートいたします。

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  • 認定申請支援
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  • 手続き代行
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