児童対象性暴力等対処規程を作ったら次は何をする?|小規模事業者が最初の30日でやること5つを解説

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ユキマサくん

純さん、児童対象性暴力等対処規程がようやく完成したんだけど、これで一段落ってこと?

純さん

残念ながら、規程の完成はスタート地点です。
現場に落とし込んで初めて意味を持ちます。

こども性暴力防止法(日本版DBS)では、児童対象性暴力等対処規程の作成はあくまでも入口です。法律上、従事者への周知・研修の実施・相談体制の整備なども必要な対応として求められています。

とはいえ、「何から手をつければいいか分からない」という施設長・園長の方も多いのではないでしょうか。この記事では、規程を作った後の最初の30日でやるべき5つのタスクを、小規模事業者の実態に合わせて整理します。

完璧な制度設計を目指す必要はありません。まず「動ける状態」を作ることが先決です。

この記事では、規程を作った後に現場で何をすればいいか分からないという方に向けて、行政書士の視点から具体的な手順をお伝えします。

この記事でわかること
  • 規程を作っただけでは足りない理由
  • 最初の30日でやるべき5つのタスクとその優先順位
  • 従事者・保護者・こどもへの周知の進め方
  • 小規模事業者がつまずきやすい3つのパターン
目次

最初の30日でやることは5つある

規程を作った後にやるべきことは、大きく5つに整理できます。順番に意味があるので、上から着手していくのが基本です。

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優先度タスク目安の時期
① 最優先責任者と相談窓口を決める1〜3日目
従事者への周知を終える4〜7日目
相談が来たときの初動フローを決める2週目
保護者・こどもへの周知を始める2〜3週目
研修を1回実施する3〜4週目

「30日で全部を完璧に仕上げる」という発想は捨ててください。

小規模事業者ほど担当できる人手が限られていますから、まず「動ける形」を作ることが先決です。5つのタスクをひと通り終えた段階で、制度への対応は運用開始の状態になります。その後は運用しながら少しずつ改善していけば十分です。

「目安の時期」はあくまでも参考です。週ごとに進めることにこだわらず、タスクを順番にこなしていくことを意識してください。施設の規模やスタッフの状況によって、ペースは変わって構いません。

なぜ規程を作っただけでは足りないのか

ユキマサくん

規程を作って提出すれば、それで対応完了じゃないの?

純さん

規程は「こんなルールで運営します」という宣言です。
宣言しただけでは、こどもの安全は守れません。

こども性暴力防止法が事業者に求めているのは、規程の作成・提出だけではありません。法律と施行ガイドラインでは、規程の整備と並んで次の対応が必要とされています。

  • 従事者への周知と研修の実施
  • こどもや保護者が相談できる体制の整備と周知
  • 疑いが生じたときの報告・対応ルールの策定と周知

つまり、規程に書いてある内容が現場で実際に機能している状態にしておくことが求められています。規程を作って棚に入れておくだけでは、制度の趣旨を満たしているとは言えません。

もう一つ重要な点があります。万が一、事案が発生したとき、あるいは所轄庁の確認が入ったときに問われるのは「規程があるかどうか」だけではありません。「いつ・誰に・どのように周知したか」「研修を実施したか」「相談窓口を設けていたか」という運用の実態が確認されます。記録が残っていなければ、対応していたとしても証明できません。

「やった」ではなく「やったことを示せる」状態にしておくことが、制度対応の基本です。記録を残す習慣を、最初の30日で身につけてください。

タスク① 責任者と相談窓口を決める

ユキマサくん

うちは私が代表者だから、責任者も相談窓口も全部私でいいんじゃないの?

純さん

小規模事業者でよくある設計ですが、それだと窓口が機能しないケースがあります。少し工夫が必要です。

責任者と窓口担当者は分けた方がいい理由

対処規程では、児童対象性暴力等への対応を統括する責任者と、こどもや保護者が相談できる窓口担当者を定める必要があります。小規模事業者の場合、代表者が責任者を兼ねること自体は問題ありません。

問題になるのは、相談窓口まで代表者一人が担う設計にしてしまうケース。加害が疑われる従事者と代表者が近しい関係にある場合、こどもや保護者は「この人に相談して大丈夫だろうか」と感じて相談をためらいます。窓口を設けても機能しなければ、設けていないのと同じです。

理想は、責任者とは利害関係のない別の担当者を窓口に置くことです。施設内にそうした人材がいない場合は、次に紹介する外部窓口の活用を検討してください。

外部窓口という選択肢

施設内だけで中立な窓口を用意するのが難しい場合、外部の専門家との契約で外部相談窓口を設置する方法があります。弁護士や社会福祉士などの専門家と顧問契約を結び、こどもや保護者が直接相談できる窓口として機能させるやり方です。

外部窓口を設けた場合は、その連絡先と相談できる内容を従事者・こども・保護者それぞれに周知しておく必要があります。窓口があることを誰も知らなければ、やはり機能しません。

責任者と窓口担当者を決めたら、その氏名・役職・連絡先を対処規程に明記してください。「担当部署」などの曖昧な記載では、いざというときに誰も動けません。

タスク② 従事者への周知を終える

ユキマサくん

規程ができたって口頭でスタッフに伝えればいいんじゃないの?

純さん

口頭だけでは後から「伝えた」ことを証明できません。
記録を残すことがセットです。

周知で必ず伝えること

従事者への周知では、規程を配布して「読んでおいてください」で終わらせないことが大切です。施設としてどういうルールを定めたのか、何が「不適切な行為」にあたるのか疑いを把握したときに誰に報告すればいいのか、これらを口頭で説明する機会を設けてください。

特に伝えておきたいのは次の3点です。

  • 自施設が定めた「不適切な行為」の具体的な内容
  • 疑いを把握したときの報告先と報告方法
  • 相談窓口の担当者名と連絡先

パートや非常勤など、ミーティングに参加しにくい従事者にも漏れなく周知することを意識してください。業務委託で入っている講師や外部スタッフも、こどもに接する業務を担う場合は周知の対象になります。

記録の残し方

口頭での説明だけでは、後から「周知した」ことを示せません。

ミーティングで説明した場合は開催日・出席者・説明内容を記録しておき、規程を配布した場合は配布日と受領者のサインや確認印をもらっておく、ここまでやれると安心です。メールで送付した場合は送信記録がそのまま証拠になります。

形式はシンプルで構いません。

大切なのは「いつ・誰に・何を伝えたか」が後から確認できる状態にしておくことです。

周知記録に残しておきたい項目
  • 説明または配布した日付
  • 対象者の氏名(または出席者リスト)
  • 説明した内容の概要
  • 確認を取った方法(署名・捺印・メール・口頭確認など)

新たに採用した従事者には、業務開始前に周知を行ってください。施行時現職者への周知を済ませた後も、採用のたびに同じ対応が必要になります。

タスク③ 相談が来たときの初動フローを決める

ユキマサくん

相談窓口は設けたけど、実際に相談が来たらどうすればいいの?

純さん

「誰が・何を・どの順番で動くか」を事前に決めておかないと、いざというときに判断が遅れます。
あわてて動くことが二次被害につながることもあるので、フローを先に整理しておくことが大切です。

フローを1枚にまとめておく

相談窓口を「置いただけ」にしないためには、相談を受けた後の動き方をあらかじめ決めておく必要があります。対処規程にフローの骨格は定めてあるはずですが、「誰が・何をするか」という実務レベルの手順は別途整理しておくと、いざというときに迷わず動けます。

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順番対応内容担当
① 相談を受ける話をしっかり受け止める。詳細を根掘り葉掘り聞かない。記録に残す窓口担当者
② 責任者へ報告窓口担当者から責任者へ速やかに報告。情報共有の範囲は必要最小限に絞る窓口担当者
接触回避被害が疑われるこどもと、加害が疑われる従事者の接触を即時に回避する責任者
④ 外部機関へ相談犯罪行為が疑われる場合は施設内での確認を待たず、速やかに警察・弁護士へ相談する責任者

このフローで特に意識してほしいのは、③の接触回避です。

「まず施設内で事実確認してから」という考えは理解できますが、確認に時間をかけている間も被害が疑われるこどもは加害が疑われる従事者と同じ空間にいます。疑いの段階であっても、接触回避は速やかに行うことが原則です。

外部機関の連絡先をあらかじめ控えておく

事案が発生してから「どこに相談すればいいか」を調べていては時間がかかります。警察・児童相談所・弁護士など、連携が想定される外部機関の連絡先を事前にリストアップして、責任者と窓口担当者が共有しておくと安心です。

あらかじめ控えておきたい外部機関の例
  • 最寄りの警察署(生活安全課)の電話番号
  • 管轄の児童相談所の電話番号
  • 顧問弁護士または相談できる弁護士の連絡先
  • 都道府県の性暴力被害者支援センターの連絡先

「まず施設内で解決しよう」という対応が、こどもへの二次被害につながることがあります。犯罪行為の疑いがある場合は、施設内の確認を待たずに警察へ相談することを、フローに明記しておきましょう。

タスク④ 保護者・こどもへの周知を始める

ユキマサくん

従事者への周知はわかったけど、保護者やこどもにも伝えなきゃいけないの?

純さん

はい、必要です。施設としてどんなルールを設けているか、何かあったときにどこに相談できるかを保護者とこどもが知っていることが、制度の実効性につながります。

保護者にはA4一枚で十分な理由

保護者への周知は、規程全文を渡す必要はありません。

「この施設ではこういうルールを定めています」
「何かあったときはここに相談できます」

という要点をA4一枚程度にまとめた資料を配布するだけで十分。むしろ規程全文を渡しても読んでもらえる可能性は低く、肝心な情報が伝わらないリスクがあります

保護者向け周知資料に盛り込む内容の例
  • 施設がこども性暴力防止法に基づく取組を行っていること
  • 相談窓口の担当者名と連絡先
  • 相談したことで不利益な扱いを受けないこと
  • 外部相談窓口の連絡先(児童相談所・性暴力被害者支援センターなど)

配布のタイミングは、入園・入学・入会の手続き時が自然。

すでに在籍している保護者には、連絡帳・お便り・メール配信など普段使っているコミュニケーション手段を活用してください。大切なのは「いつ・誰に配布したか」を記録しておくことです。

こどもへの伝え方

こどもへの周知は、年齢や発達段階に応じて内容をかみ砕いて伝えることが前提です。

難しい言葉で規程の内容を説明する必要はありません。

伝えるべきことはシンプル。

  • 「いやなことをされたら、いやと言っていい」
  • 「困ったことがあれば○○先生に話してほしい」
    という2点が伝われば十分です。

就学前のこどもには、言葉での説明より日常的な関わりの中で安心して話せる雰囲気を作ることの方が重要です。未就学児の場合は、保護者への丁寧な周知と日常的な観察で代替することが認められています。小学生以上であれば、クラス内での短い説明や掲示物の活用も有効です。

こどもへの周知は「1回やれば終わり」ではありません。
少なくとも年に1回は、面談やアンケートなどを通じて定期的に実施することがガイドラインで求められています。最初の30日では「まず始める」ことを目標にしてください。

タスク⑤ 研修を1回実施する

ユキマサくん

研修って、外部講師を呼んで大がかりにやらないといけないの?

純さん

最初の1回はそこまで構える必要はありません。
こども家庭庁が無料で公開している動画を使えば、今すぐ始められます。

こども家庭庁の無料動画から始めればいい

こども性暴力防止法では、従事者に「座学と演習を組み合わせた研修」を受講させることが求められています。ただし、最初から独自の研修プログラムを組む必要はありませんこども家庭庁が作成した標準研修動画を使う方法が、小規模事業者にとって最も手間のかからない選択肢です。

動画の視聴が「座学」にあたります。視聴後に従事者同士で「自分たちの現場ではどうか」を短時間話し合う時間を設けることで、「演習」の要件を満たすことができます。30〜60分程度のミーティングに組み込む形で十分です。外部講師を呼んだり、まとまった時間を確保したりしなくても、まず1回実施することを優先してください。

記録を残すことが大切

研修を実施したら、必ず記録を残してください

認定申請の際には、研修を実施したことを証する書類の提出が求められます。難しく考える必要はなく、実施日・参加者・使用した教材・実施内容の概要をメモしておけば十分です。

研修記録に残しておきたい項目
  • 実施日時・場所
  • 参加者の氏名
  • 使用した教材(動画名・資料名など)
  • 座学・演習それぞれの実施内容の概要
  • 実施者(責任者)の氏名

研修は1回やって終わりではなく、定期的に実施することがガイドラインで求められています。

とはいえ、最初の30日で大切なのは「まず1回やる」こと。2回目以降のスケジュールは、1回目を終えてから考えれば十分です。

研修の時間は労働時間に含まれます。パートや非常勤の従事者にも受講させる場合は、勤務時間内に組み込む形で実施してください。

30日チェックリスト

最初の30日が終わったら、以下の項目を確認してみてください。すべてにチェックが入った状態が、制度対応の「運用開始」です。

  • 児童対象性暴力等対処規程の最終版を確定し、責任者が内容を把握している
  • 責任者と相談窓口担当者を決め、氏名・連絡先を規程に明記した
  • 従事者全員に規程の内容を説明し、周知記録を残した
  • パート・非常勤・業務委託スタッフへの周知も漏れなく終えた
  • 相談が来たときの初動フローを決め、担当者が把握している
  • 警察・児童相談所・弁護士など外部機関の連絡先を控えた
  • 保護者向けの周知資料を作成・配布し、配布記録を残した
  • こどもへの周知または日常的な観察・声かけの取組を始めた
  • 従事者への研修を1回実施し、研修記録を残した
  • 次回の研修・見直しの時期をおおまかに決めた

チェックが入らない項目があっても、落ち込む必要はありません。「どこが終わっていないか」が見える化できたことが大切です。未完了の項目を次の目標にして、引き続き取り組んでください。

小規模事業者がつまずきやすい3つのパターン

制度対応を進める中で、小規模事業者が陥りやすい失敗には共通したパターンがあります。事前に知っておくことで、同じ落とし穴を避けられます。

パターン① 規程を作って満足してしまう

最もよくある失敗です。

こども家庭庁のひな型を使って規程を完成させた時点で「対応できた」という感覚になってしまい、周知も研修も後回しになるケースです。

規程は現場で運用されて初めて意味を持ちます。従事者が内容を知らない、相談窓口の存在を誰も知らない、という状態では、万が一のときに制度が機能しません。規程の完成はゴールではなくスタートだという意識を持つことが、この失敗を避けるための第一歩です。

パターン② 相談窓口が代表者だけで機能しない

「うちは小さい施設だから、相談窓口は私(代表者)が担う」という設計にしてしまうパターンです。代表者が責任者を兼ねること自体は問題ありませんが、相談窓口まで一人で担うと、こどもや保護者が相談をためらう状況が生まれます

特に、加害が疑われる従事者と代表者が長い付き合いの場合、「この人に言っても守ってもらえないかもしれない」という心理が働きます。施設内に中立な担当者を置くことが難しければ、外部の弁護士や専門家との顧問契約で外部窓口を設置する方法を検討してください。

パターン③ 周知したつもりで記録が残っていない

従事者に口頭で説明したり、保護者にお便りを配ったりしたにもかかわらず、記録を残していないケースです。「やった」ことと「やったと示せる」ことは別物です。

所轄庁の確認が入ったとき、あるいは事案が発生したときに問われるのは記録の有無です。どんなに丁寧に対応していても、記録がなければ証明できません。周知・研修・相談対応のそれぞれで記録を残す習慣を、最初の30日のうちに身につけておくことが重要です。

まとめ

ユキマサくん

規程を作った後にやることが結構あるんだな。
でも、30日でひと通り終わらせられる量ではあるね。

純さん

そうです。
最初から完璧を目指すより、まず動ける状態にすることが先です。5つのタスクをひと通り終えれば、制度対応は運用開始の状態になります。あとは運用しながら少しずつ改善していけば十分です。

この記事の重要ポイント

  • 規程の完成はスタート地点。周知・研修・相談体制の整備まで行って初めて制度対応といえる
  • 最初の30日でやるべきことは5つ。責任者と窓口の決定→従事者への周知→初動フローの整備→保護者・こどもへの周知→研修の実施の順に進める
  • 「やった」ではなく「やったと示せる」状態にするために、周知・研修・相談対応のすべてで記録を残す
  • 小規模事業者がつまずきやすいのは、規程を作って満足する・窓口が代表者だけで機能しない・記録が残っていないの3つ

制度対応に終わりはありません。

ただ、最初の30日で「動ける形」を作っておくと、その後の運用がずっと楽になります。まず動き始めることが、こどもの安全を守る第一歩です。

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純さん

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