認可外保育施設向け|日本版DBSの児童対象性暴力等対処規程の作り方【保育現場の実情に合わせて解説】

認可外保育施設
ユキマサくん

純さん、認可外保育施設も日本版DBSで対処規程を作らないといけないって聞いたんだけど、認可保育所と同じ内容でいいの?

純さん

ユキマサくん、認可外保育施設と認可保育所は法律上の位置づけが違うので、規程の提出先も目的も少し違います。
それに保育施設特有の場面への対応が必要なので、こども家庭庁が配布しているひな型をそのまま提出するだけでは不十分なんです。

こども性暴力防止法(日本版DBS)が2025年12月に施行され、認可外保育施設も制度への対応が求められるようになりました。

認可外保育施設は国の「認定」を任意で受ける対象です。認定を受けるかどうかは経営判断になりますが、認定申請には児童対象性暴力等対処規程の作成と提出が必須です。

ただし、こども家庭庁のひな型をそのままコピーするだけでは不十分です。保育施設には排泄介助・着替え・午睡など特有の場面があり、それに対応した文言の追加が必要です。

この記事では、認可外保育施設が児童対象性暴力等対処規程を作成する際に押さえておくべきポイントを、行政書士の視点から解説します。

この記事でわかること
  • 認可外保育施設にとって対処規程が何のための書類なのか
  • こども家庭庁のひな型が持つ4つの柱の内容
  • 保育現場で閉鎖性が高まりやすい5つの場面と追加文言例
  • 疑いが生じたときの対応手順の規程への落とし込み方
目次

認可外保育施設における児童対象性暴力等対処規程の位置づけ

日本版DBSの対象事業者は、法律で取組が義務づけられている「学校設置者等」と、国の認定を任意で受ける「民間教育保育等事業者」の2種類に分かれます。認可外保育施設は後者にあたります。

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区分主な対象取組の位置づけ
義務対象認可保育所・幼稚園・認定こども園・児童福祉施設など犯罪事実確認・規程整備が法律で義務づけられる
認定対象(任意)認可外保育施設・学習塾・放課後児童クラブ・一時預かり事業など国の認定を任意で申請する。認定を受けた場合のみ制度が適用される

認定申請に対処規程の提出は必須です

認可外保育施設が認定を申請するには、こども家庭庁に次の書類を提出しなければなりません。

  • 事業内容を説明する資料
  • 認定基準に適合していることを証する資料
  • 児童対象性暴力等対処規程
  • 情報管理規程
  • 犯罪事実確認を適切に実施する旨の誓約書

対処規程は「申請のために作る書類」ではなく、こどもの安全を守る実効性ある運用マニュアルです。ひな型のコピーでは不十分で、施設の実態に合わせた調整が必要です。

認可保育所との違い

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認可保育所認可外保育施設
法律上の位置づけ義務対象認定対象(任意)
規程の提出先所轄庁への届出ルールに従う認定申請時にこども家庭庁へ提出
現職者の犯罪事実確認の期限施行日から3年以内認定日から1年以内

規程の骨格は共通ですが、認可外保育施設は保育補助・短時間スタッフ・委託職員など多様な雇用形態の従事者が多く、その実態に合わせた記載が必要になります。

対処規程の骨格(ひな型の4つの柱)

ユキマサくん

ひな型ってどういう構成になってるの?

純さん

大きく4つの柱で構成されています。
この骨格を理解しておくと、保育施設に合わせてどこに何を追加すればいいかが見えてきます。

こども家庭庁が公開している対処規程のひな型は、次の4つの柱で構成されています。保育施設に特有の文言を追加する前に、まずこの骨格を確認しておきましょう。

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内容規程上の位置づけ
① 定義「児童対象性暴力等」と「不適切な行為」の範囲を明確にする何が禁止行為にあたるかの基準
② 実施体制責任者の設置・報告ルート・周知方法を定める誰がどう動くかの組織的な仕組み
③ 防止措置性暴力のおそれがある場合に講じる措置(接触回避・配置転換等)を定める疑いが生じたときの即時対応の根拠
④ 調査・支援事実確認の手順と、被害が疑われるこどもへの支援策を定める事案が発生したときの対応の流れ

柱① 定義―「不適切な行為」の範囲が最も重要

「児童対象性暴力等」の定義は法律で決まっており、ひな型の内容をそのまま使えます。

一方、「不適切な行為」の定義は各施設が実態に合わせて決めるものです。ここが保育施設向けの調整が最も必要な部分です。

児童対象性暴力対処規程 ひな型 不適切

ひな型に例示されている「不適切な行為」は次の2つだけです。

  • こどもと私的な連絡先(SNSアカウント・メールアドレス等)を交換し、私的なやり取りを行うこと
  • 休日や放課後に、こどもと二人きりで私的に会うこと

これらは全業種共通の内容です。保育施設の実態(排泄介助・着替え・午睡・撮影など)はカバーされていません。次の章で追加すべき文言を整理します。

柱② 実施体制―相談窓口の担当者に注意

実施体制で特に重要なのが相談窓口の設置です。こどもや保護者が性暴力・不適切な行為について相談できる窓口を定める必要があります。

「代表者1名が相談窓口を兼ねる」という設計には落とし穴があります。加害が疑われる従事者と近しい立場の人が窓口担当になると、こどもや保護者は相談できません。利害関係のない担当者を設けるか、外部の専門家(弁護士等)との契約で外部窓口を設置することが現実的です。

柱③ 防止措置―「おそれ」の段階で動くことが大切

防止措置は「性暴力が確定した場合」ではなく、「性暴力が行われるおそれがあると認めるとき」に発動するものです。疑いの段階での接触回避措置を躊躇なく実行できるよう、規程に手順を明記しておく必要があります。

柱④ 調査・支援――こどもへの聴き取りは最小限に

事実確認のための調査では、こどもへの聴き取りは二次被害・記憶の汚染を防ぐため回数を最小限にするという方針を規程に明記しておくことが重要です。客観的な証拠がある場合は聴き取りを行わない判断も含めて定めておきましょう。

保育施設特有の場面と追加文言例

ユキマサくん

ひな型に追加する文言って、どんな場面を想定して書けばいいの?

純さん

保育施設でリスクが高まりやすいのは、他の職員の目が届きにくい「閉鎖性の高い場面」です。
場面ごとに追加すべき文言をまとめましたので、ひな型の「不適切な行為」の定義に追記する形で使ってください。

「不適切な行為」は一律に禁止するものではなく、業務上の必要性・こどもの発達段階・現場の状況によって判断が変わります。職員が過度に委縮しないよう、「業務上必要な行為との区別」を明確にしておくことが重要です。

場面① 午睡

照明を落とした保育室で各職員が担当エリアを分けて監視するため、実質的に一人の職員とこどもが閉鎖環境になります。こどもが横になって眠る場面では担当職員との距離も非常に近くなります。

「不適切な行為」への追加文言例
  • 午睡中に特定のこどもと継続的に添い寝・不必要な身体接触を行うこと
  • 午睡の監視を複数配置で行わず、施設が定めた体制によらずに一人で担当すること

場面② 排泄介助(おむつ交換・トイレ同伴)

プライベートゾーンに直接関わるケアで、おむつ交換スペースやトイレ内では他の職員の目が届きにくい状況が生じます。業務上必要な接触と不適切な接触の境界が曖昧になりやすい場面です。

「不適切な行為」への追加文言例
  • おむつ交換時に衣服の上から陰部を触ったりつかむように確認したり、おむつの中に手を入れて確認するなど、誤解を受けるような方法で交換すること
  • こどもの発達段階から考えて業務上必要でないのに、排泄介助や入浴介助に入ること
  • 特段の必要性がなく特定のこどもにだけ排泄介助を行おうとすること
  • こどもが一人で排泄・着替え等を行いたいと意思を示しているにもかかわらず、わざわざ介助に入ること

場面③ 着替え介助

水遊びや泥遊びの後など1日に複数回発生します。更衣スペースや仕切りカーテン内では他の職員の目が届かない状況が生まれます。

「不適切な行為」への追加文言例
  • 不必要に、こどもが着替えている部屋・スペースに入室すること
  • 業務上必要でないのに特定のこどもの着脱を担当しようとすること
  • 施設が定めた複数の目がある環境での実施という方針によらず、他の職員の目がない環境でこどもに着替えをさせること

場面④ 送迎時の引き渡し前後

早朝保育・延長保育の時間帯は職員配置が薄くなります。保護者が帰った直後や迎えが来る直前に、玄関や廊下でこどもと職員が一対一になりやすい時間が生まれます。

「不適切な行為」への追加文言例
  • 早朝・延長保育の時間帯にこどもを人目のない場所へ一人で連れて行くこと
  • 送迎時にこどもと職員が二人きりになる状況を継続的に作り出すこと

場面⑤ 体調不良児の別室対応

体調不良のこどもを別室で休ませる際、保護者のお迎えまで担当職員とこどもが一対一になる時間が長くなります。扉を閉めれば完全な閉鎖環境になります。

「不適切な行為」への追加文言例
  • 別室・静養室でこどもと二人きりになる際に扉を施錠または完全に閉め切ること
  • 別室対応中に他の職員による定期的な状況確認を行わないこと

全場面共通で追加しておきたい文言

場面を問わず保育施設全般に追加しておきたい項目が2つあります。

私物端末での撮影
  • 施設が指定した端末以外(私物スマートフォン・タブレット等)でこどもの写真・動画を撮影・保存・管理すること
  • 業務上必要と認められる範囲を超えてこどもの写真や動画を撮影すること
特定のこどもへの特別扱い
  • 特段の理由なく特定のこどもだけを継続的に担当しようとすること(担当制として施設が定めた範囲を超える場合)
  • 特定のこどもに金品・食べ物・おもちゃ等を与えたり、容姿を過度にほめたりすること
ユキマサくん

場面ごとに文言が整理されてると、ひな型のどこに追加すればいいかが分かりやすいね。

疑いが生じたときの対応手順の書き方

ユキマサくん

万が一「あの先生にこんなことをされた」という話が出てきたとき、規程にどう書いておけばいいの?

純さん

規程には「誰が・何を・どの順番で動くか」を具体的に落とし込んでおく必要があります。
ひな型には骨格だけしか書かれていないので、施設の実態に合わせて肉付けしておかないと、いざというときに動けません。

対処規程のひな型では、疑いが生じたときの対応として次の3つを定めることが求められています。

  • 疑いを把握した従事者からの報告ルール(誰に・何を・どのように報告するか)
  • 報告を受けた責任者の対応ルール(接触回避・調査・外部連携の手順)
  • 調査結果を踏まえた防止措置(当該従事者を対象業務から外すなどの措置)

報告ルールに書いておくべきこと

疑いを把握した従事者が取るべき行動と、報告先を明記します。施設長の氏名・役職を具体的に記載しておくことで、「誰に報告すればいいか分からない」という状況を防げます。

報告ルールの記載例
  • 児童対象性暴力等または不適切な行為が行われた疑いを把握した従事者は、直ちに責任者(施設長 ●●)に報告する
  • 報告は口頭に加え、日時・報告者名・内容・情報の入手元を書面に記録して提出する
  • 些細に見える情報であっても自己判断で抱え込まず、速やかに報告する

責任者の対応ルールに書いておくべきこと

報告を受けた責任者が行う対応を、優先順位の順に明記します。「事実確認が終わるまで待つ」のではなく、疑いの段階で接触回避を即時に行うことを規程に明示しておくことが重要です。

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対応の順番規程に書いておく内容
① 接触回避(即時)加害が疑われる従事者を被害が疑われるこどもの担当業務から外す。別クラス配置・自宅待機等を検討する
② 情報管理(即時)報告内容を知る者を必要最小限に絞る。加害が疑われる従事者にはこの段階で報告内容を伝えない
③ 証拠保全(速やかに)防犯カメラ映像・連絡記録・こどもの発言記録などを保全する。証拠に接する人数を最小限にする
④ 外部機関への相談犯罪行為の疑いがある場合は施設内の確認を待たず速やかに警察へ相談する。児童相談所・弁護士にも早期から連絡する

「まず施設内で解決しようとする」ことがこどもへの二次被害につながります。犯罪行為の疑いがある場合は、施設内の確認を待たず速やかに警察へ相談することを規程に明記しておきましょう。

防止措置に書いておくべきこと

調査の結果に応じた措置の区分を規程に定めておきます。「何が起きたらどう対応するか」があらかじめ決まっていることで、感情的な判断を排した対応が可能になります。

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判断の区分規程に書いておく措置
性暴力または重大な不適切な行為と判断された場合原則として対象業務への従事を停止。配置転換・解雇等の雇用管理上の措置を検討する
初回かつ比較的軽微な不適切な行為の場合指導・研修受講命令を行い、その後の経過を注意深く観察する
軽微な行為を繰り返した場合重大な行為と同様の措置を講じる

対応手順に関して規程に盛り込んでおくべきポイント

  • 疑いを把握した従事者の報告先(責任者の氏名・役職)を明記している
  • 報告を受けた責任者が最初に行う「接触回避」の手順が明記されている
  • 情報共有の範囲を必要最小限に絞るルールが明記されている
  • 犯罪行為が疑われる場合の警察への通報・相談が明記されている
  • 弁護士・児童相談所等の外部専門機関との連携方針が明記されている
  • こどもへの聴き取りは回数を最小限にするという方針が明記されている
  • 報告・相談した者への不利益取扱いの禁止が明記されている
ユキマサくん

ひな型の骨格を理解したうえで、保育施設の実態に合わせて肉付けしていくんだね。

まとめ

ユキマサくん

対処規程って、ひな型をそのまま使えばいいだけだと思ってたけど、保育施設は追加すべきことが結構あるんだね。

純さん

そうなんです。認可外保育施設はこどもを長時間・密接な環境で預かる場所です。
現場の実態に合った規程を整備することが、こどもを守ることにも、施設の信頼を守ることにもつながります。

この記事の重要ポイント

  • 認可外保育施設の対処規程は認定申請の必須提出書類。認可保育所とは提出先・確認期限が異なる
  • ひな型は①定義・②実施体制・③防止措置・④調査・支援の4つの柱で構成されており、このうち「不適切な行為の定義」が保育施設で最も調整が必要な部分
  • 午睡・排泄介助・着替え・送迎・別室対応の5場面は閉鎖性が高まりやすく、それぞれ保育施設特有の追加文言が必要
  • 疑いが生じたときの対応手順は「報告ルール・対応ルール・防止措置」を施設の実態に合わせて規程に落とし込んでおく。疑いの段階での接触回避措置を明記することが特に重要
ユキマサくん

規程の作成、保育現場への文言の落とし込み…全部自分でやるのはなかなか大変だな。

純さん

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